抱く家

内外の境界を構築する一枚の面が様々な性質をいだき家として
佇んでいる。

ここでは、ある一定の厚みを持った一繋がりの面のみによって空
間が構成されている。
面は、境界となり内外を分かち1つの内部空間を作り出す。
また、この面に外部から押し込まれたような起伏を与えると、1つ
の空間が距離と視覚によって緩やかに分節され、それぞれが独
立した室を装ったような場が生まれる。面は、部分部分で床や壁、
屋根として振舞うが面的には連続していて、全てが内部と外部の
境界である。

さらに、その境界に開口を設けると、そこには揺らぐ空間が寄り添う。
揺らぐ空間とは、縁側やバルコニー、窓際、庇の下など、住宅と外
部環境との境界となっている壁の開口部周辺に発生し、環境や必
要に応じて機能や使われ方が移ろうような空間である。この揺らぎ
は一繋がりの連続空間を波及し、それぞれの振れ幅で内部空間全
体が揺らぎ、個々の空間は日々変化し続ける。

面の内側の空間には様々な性質と環境が連続し無数の居室を持っ
た家のように空間の選択性と住まい方のバリエーションを与えてくれる。
その都度その行動に適した場へと移動し続けながら生活する。

柔軟な空間は、人間の側に生じた変化さえも空間の性質として内包
できるような寛大さを持って存在している。