刹那の部屋

ここは、強固な大屋根と華奢なバラックやテント、蚊帳などによって
構成された極めて流動的な空間である。
大屋根はそこに空間を保障し、その大きさを制限する。
屋根の持つ開口からは、様々な事象が行き来し、周辺環境の変化は
直接的に内部空間へと伝えられ、生活もまた周辺へと波及する。
一繋がりの空間内で場所ごとに差異が生まれ、各々が個別の性質を
持った小空間として存在する。それらを必要に応じて選択し生活を展
開する。そこでは、華奢な要素によって足りない条件を補うかのように
室が形成されていく。この室は環境や季節と共に構築、補修、解体を
繰り返し、その時々の必然性によって空間の容態は変化していく。
部屋は必要とされる分だけ作られ変形や移動によりその役割を全うし
新たな必然的空間と入れ替わっていく。

空間における一瞬一瞬の必然を拾い集めるようにその部屋は成長し
消える。

2009年春、ある晴れの日の生活の風景